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気をつけたい インプラントの「負のサイクル」


「歯周病で歯を失ってしまったけど、インプラントにしたから、もう大丈夫」

「何だか最近、インプラントがグラグラしてきた気がする…歯みがきとメンテナンスをさぼっちゃったからかな…」

「せっかく手術まで受けたのに、インプラントが抜け落ちるなんてことがあるの!?」


人工歯根をお口の中に作るインプラント。インプラントは高い安定性を持ちます。安定性の高さから、治療を受けた患者さんの中には「もうこれで、歯みがきや歯科医院通いはしなくても大丈夫だよね」と勘違いしてしまうケースも。


インプラントにしたからもうケアをしなくて良い、というのは大きな間違いです。インプラントにしたからこそ、今まで以上にセルフケア(歯みがき+歯間清掃)を行い、歯科医院で定期的にメンテナンスを受け、インプラントとお口の健康を保たなければなりません。


今回は「気をつけたい インプラントの「負のサイクル」」および「予防の大切さ」についてのお話です。


■インプラントの「負のサイクル」とは?


歯を失う原因の第1位は歯周病です。日本人の歯を失う原因の約4割は歯周病であり、中高年世代を中心に多くの方が歯周病で歯を失っています。なお、歯を失う原因の第2位はむし歯、第3位は歯根が折れたり割れる歯根破折です。


歯周病の方が毎日の歯みがき+歯間清掃によるセルフケア、および、歯科医院で定期的に受けるメンテナンスを怠ると以下のような「負のサイクル」に陥り、インプラントが抜け落ちてしまうことがあります。


負のサイクル① セルフケア・メンテナンス不足により歯周病が進行する

歯周病は歯周病菌による感染症です(※)。


歯に付着した歯垢の中など、口腔内には歯周病菌が棲み着いています。


毎日のセルフケア(歯みがき+歯間清掃)、および、歯科医院で受ける定期検診(検診+歯のクリーニング(歯石取りを含む))による歯周病メンテナンスを怠ると歯垢や食べカスなどの磨き残しが出てしまい、歯周病菌が増えて歯周病が進行しやすくなります。


(※)噛み合わせの乱れにより発症・進行

する非プラーク性の歯周病もあります。


負のサイクル② 重度の歯周病で歯を失い、歯周病治療の後、インプラントを入れる

ご自身で行うセルフケア、および、歯科医院で受ける定期メンテナンスの不足により歯周病が悪化。重度の歯周病になり大きく顎の骨が溶け、歯が抜け落ちてしまうことがあります。


重度の歯周病で歯を失ったときは歯周病治療を行い歯ぐきや顎の骨の病巣を取り除いた後、インプラント治療を実施してインプラントを入れます(※)。


(※)患者さんやお口の状態によってはインプラ

ント治療を適応できない場合があります。


なお、歯を補う治療でインプラントを選択することが負のサイクルなのではありません。インプラントは安定性が高く、残っている歯を傷つけないなど、メリットが多い治療法です。


負のサイクル③ インプラント治療後、セルフケア・メンテナンス不足により歯周病の一種である「インプラント周囲炎」を発症する

インプラント周囲炎とは、歯周病の一種です。インプラント周囲炎を発症すると歯ぐきが腫れて炎症を起こしたり、歯ぐきが下がる、歯ぐきから膿が出るなどの症状が現れ始めます。


毎日のセルフケア、および、歯科医院で受ける定期的なメンテナンスを怠ってしまうとケア・メンテナンス不足によりお口の中で歯周病菌が増え、インプラント周囲炎を発症する可能性があります。


負のサイクル④ セルフケア・メンテナンス不足によりインプラント周囲炎が進行し、インプラントが抜け落ちる

歯周病と同様、インプラント周囲炎が重度に進行した場合は大きく顎の骨が溶けてしまい、インプラントが抜け落ちる、という経過をたどることが多いです。


毎日のセルフケアと歯科医院で受ける定期的なメンテナンスを怠るとお口の中で歯周病菌が増えてしまい、繁殖した歯周病菌によってインプラント周囲炎が進行しやすくなります。


負のサイクル⑤ 歯周組織のダメージが大きくインプラント治療を行えない状態になり、ブリッジ・入れ歯で歯を補わざるを得なくなる

1回目は歯周病でご自身の歯を失い、2回目は歯周病の一種であるインプラント周囲炎でインプラントを失う「負のサイクル」。


負のサイクルによりインプラントを失うケースでは、歯周病・インプラント周囲炎により、歯ぐきや顎の骨にダメージが蓄積されている場合が多いです。


歯周組織のダメージが大きく、歯ぐきの退縮や顎の骨の吸収(骨が溶けること)が起きている場合はインプラント治療を行えなくなってしまうことがあります。


インプラント治療を行えない場合は、ブリッジ・入れ歯で歯を補わざるを得なくなることも。


せっかく、自己負担で大きな治療費を払ってインプラントを入れたのに最終的にブリッジ・入れ歯で歯を補わざるを得なくなるのは、患者さんにとって大きなストレスになります(がっかり、落胆)。本当にもったいないです。


【歯周病・インプラント周囲炎を防ぐためには毎日のセルフケア+歯科医院で受ける定期的なメンテナンスが大切です】


歯周病、および、インプラント治療後のインプラント周囲炎の発症・進行を防ぐためには、まずは患者さんご自身による毎日のセルフケア(歯みがき+歯間清掃)をしっかり行うことが大切です。


ご自身で行う毎日のセルフケアが基本ですが、歯みがき+歯間清掃のみでは歯周病・インプラント周囲炎は予防できません。


セルフケアと併せ、定期的に歯科医院でメンテナンス(お口・インプラントの状態チェック+歯のクリーニング)を受けることでお口の健康とインプラントを維持しやすくなります。


大切な歯、そして、インプラントを守るためにも毎日のセルフケアを欠かさずに行い、併せて、定期的に歯科医院でメンテナンスを受け、歯周病・インプラント周囲炎の発症・進行を防ぎましょう。


高山歯科室
歯科医師
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