歯周病になりやすい人・悪化しやすい人
― 生活習慣・持病・お薬のリスク因子
同じように歯みがきをしていても、歯周病が進みやすい人と、そうでない人がいます。歯周病の直接の原因は歯垢(プラーク)の中の細菌ですが、「進みやすさ」は生活習慣や持病、飲んでいるお薬によって大きく変わります。名古屋・栄の高山歯科室が、見落とされがちなリスク因子を整理します。
ご自身に当てはまるものがないか、確認しながら読んでみてください。当てはまる方こそ、早めの検査とご相談をおすすめします。
まず前提 ― 直接の原因は細菌、でも「進みやすさ」は人による
歯周病は、歯と歯ぐきの境目にたまった細菌によって起こる感染症です。ただ、同じ細菌量でも炎症の進み方には個人差があります。体の抵抗力、噛む力のかかり方、唾液の量、そして持病やお薬が、その差を生みます。原因菌のコントロールに加えて、こうした背景因子を一緒に見直すことが、歯を残すうえで大切です。
当院では、お口の菌の状態をPCR法で検査し、原因菌の種類や量を「見える化」したうえで、必要に応じて抗菌剤を用いた治療(抗菌療法)も歯周病治療に取り入れています。やみくもではなく、一人ひとりの原因に合わせた治療を目指します。
生活習慣・お口の環境のリスク因子
- 喫煙…歯ぐきの血流や免疫を低下させ、歯周病を進めやすく、治りも悪くします。出血が出にくく「気づきにくい」のも特徴です。
- 歯ぎしり・食いしばり…歯を支える組織に過剰な力がかかり、骨の破壊を早めることがあります。
- 歯並びの乱れ…みがき残しが増え、汚れがたまりやすくなります。
- 合っていない被せ物・詰め物…段差やすき間に汚れがたまり、炎症の原因になります。
- 体質(遺伝的な要因)…歯周病へのかかりやすさには、生まれ持った体質が関わることもあります。
- ストレス・睡眠不足…免疫の低下や食いしばりを通じて悪化に関わります。
- 口呼吸・唾液の減少…口の中が乾くと細菌が増えやすくなります。
- 加齢…歯ぐきが下がりやすく、これまでの蓄積も影響します。
持病(全身の病気)のリスク因子
歯周病は「お口だけの問題」ではありません。次のような持病があると、歯周病が進みやすくなったり、治療を進めるうえで配慮が必要になったりします。
| 糖尿病 | 歯周病と互いに悪影響を及ぼし合う関係です。血糖が高いと歯周病が進みやすく、歯周病があると血糖コントロールも乱れやすくなります。 |
|---|---|
| 膠原病 | 関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)など。免疫の低下や唾液の減少、治療で使うステロイド・免疫抑制薬の影響で、歯周病が進みやすく、治療計画にも配慮が必要です。 |
| 肝機能障害 | 出血が止まりにくい、薬の代謝に影響が出るなどの理由で、外科的な処置やお薬の使い方に注意が必要です。 |
飲んでいるお薬のリスク因子
意外に見落とされがちなのが「お薬」です。歯周病そのものや治療に影響するお薬があります。
骨粗鬆症のお薬 ― 抜歯や手術のときに注意
骨を強くする「骨吸収を抑えるお薬」を使っている方は、抜歯・インプラント・歯周外科などの処置のあとに、まれにあごの骨のトラブル(薬剤関連顎骨壊死/MRONJ)が起こることが知られています。次のようなお薬が該当します。
| ビスホスホネート製剤 (BP製剤・飲み薬) | 骨粗鬆症で広く使われる経口(飲み薬)のお薬です(アレンドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸など)。長期間の服用で、顎骨壊死のリスクがやや高まるとされます。 |
|---|---|
| ビスホスホネート製剤 (BP製剤・注射) | 点滴・注射で用いるタイプ(ゾレドロン酸など)。特に、がんの骨転移などで高用量が使われる場合は注意が必要です。 |
| 抗RANKL抗体 (注射薬) | RANKLという物質に作用して骨吸収を抑える注射薬(デノスマブ=プラリア/ランマークなど)。こちらも顎骨壊死との関連が知られています。 |
頻度は決して高くありませんが、処置の前にお薬を把握しておくことが大切です。自己判断でお薬を中止せず、必要に応じて処方医(主治医)と連携して進めます。「骨粗鬆症の薬(飲み薬・注射・点滴)」を使っている方、過去に使っていた方は、必ずお申し出ください。
高血圧のお薬(カルシウム拮抗薬)― 歯ぐきが腫れることがあります
高血圧で使われるカルシウム拮抗薬(ニフェジピン、アムロジピンなど)では、副作用として歯ぐきが腫れて盛り上がる「薬物性歯肉増殖」が起こることがあります。同様の変化は、てんかんの薬(フェニトイン)や免疫抑制薬(シクロスポリン)でも見られます。多くはていねいなプラークコントロールで軽減し、必要に応じて歯ぐきの処置を行います。「最近、歯ぐきがぶよぶよ腫れてきた」方は、服用中のお薬もあわせてご相談ください(お薬の変更は自己判断せず、必ず主治医とご相談ください)。
多くのお薬を飲んでいる方・口が乾く方
複数のお薬を服用していると(ポリファーマシー)、副作用で唾液が減り口が乾くことがあり、細菌が増えて歯周病やむし歯が進みやすくなります。心当たりのある方は、口の乾き対策も含めてご相談ください。
受診のときは「お薬手帳」をお持ちください。
高齢化にともない、持病を持ちながら通院される方が増えています。歯科に伝えられないまま始まっているお薬も少なくありません。安全に治療を進めるため、服用中のお薬・持病・サプリメントは、遠慮なくすべてお知らせください。お薬手帳があると確実です。基礎疾患のある方こそ、全身の状態をふまえて診させていただきます。
セルフチェック ― 当てはまる項目はありますか
- たばこを吸う/以前吸っていた
- 糖尿病、膠原病、肝臓の病気などの持病がある
- 骨粗鬆症の薬(飲み薬・注射・点滴)を使っている
- 高血圧などで複数のお薬を飲んでいる
- 歯ぎしり・食いしばりを指摘されたことがある
- 最近、歯ぐきが腫れる・出血する・下がってきた
- 口が乾きやすい
ひとつでも当てはまる方は、リスクを見極めるためにも一度検査をおすすめします。原因や背景に合わせて、無理のない治療計画をご提案します。
よくあるご質問
- Q. 骨粗鬆症の薬を飲んでいますが、抜歯はできますか?
- 多くの場合、対応可能です。お薬の種類・使用期間などを確認し、必要に応じて主治医と連携して進めます。まずは服用中のお薬をお知らせください。
- Q. 高血圧の薬で歯ぐきが腫れることはありますか?
- カルシウム拮抗薬などで歯ぐきが腫れる「薬物性歯肉増殖」が起こることがあります。多くはていねいな清掃で改善します。お薬の変更は自己判断せず、歯科と主治医にご相談ください。
- Q. 持病があると歯周病の治療は受けられませんか?
- 受けられないわけではありません。持病やお薬をふまえて、安全に配慮した計画で進めます。だからこそ、事前に正確にお伝えいただくことが大切です。
- Q. お薬手帳は必要ですか?
- ぜひお持ちください。服用中のお薬を正確に把握できると、より安全に治療を進められます。
気になる項目があった方へ
生活習慣・持病・お薬は、歯周病の進み方や治療に確かに関わります。当院では、こうした全身の背景もふまえて検査・診断を行い、「どの歯を、どうすれば残せるか」を一緒に考えます。歯周病治療の詳しいご案内は下記をご覧ください。
まずはご相談・検査から。あなたのリスクに合わせて考えます。
▶ WEB予約はこちら ▶ お電話:052-242-2213〒460-0008 名古屋市中区栄3-15-27 いちご栄ビル7F
地下鉄 栄駅16番出口より徒歩5分/矢場町駅より徒歩2〜3分
1階「ナイキ(NIKE)」が目印です
参考
- 顎骨壊死検討委員会(日本口腔外科学会ほか6学会合同)「薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023」
- Ruggiero SL, Dodson TB, Aghaloo T, et al. American Association of Oral and Maxillofacial Surgeons’ Position Paper on Medication-Related Osteonecrosis of the Jaws—2022 Update. J Oral Maxillofac Surg. 2022;80(5):920-943.
監修:高山歯科室 院長 高山 光平
名古屋・栄の高山歯科室 院長。1994年から歯周組織再生治療に取り組み、歯周病・インプラント治療を長年専門的に手がけています。医院・院長の紹介はこちら
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。お薬の効果・副作用の現れ方には個人差があり、すべての方に当てはまるものではありません。服用中のお薬の中止・変更は、自己判断せず必ず処方医(主治医)にご相談ください。診断・治療の適応やリスクは、検査のうえ個別にご説明します。