歯周病は「お口だけ」の問題ではありません
― 全身の病気とのつながり
歯周病は、歯を失う大きな原因であると同時に、全身のさまざまな病気と関わっていることがわかってきました。歯ぐきの炎症部から細菌やその産物が血管を通じて全身に運ばれ、体のあちこちに影響を及ぼすと考えられています。名古屋・栄の高山歯科室が、代表的なつながりをわかりやすく解説します。
「歯のためだけでなく、体の健康のために歯周病を治す・防ぐ」──そんな視点でお読みください。
歯周病と全身の病気 ― 主なつながり
| 糖尿病 | 歯周病と互いに悪化させ合う「双方向の関係」が知られています。歯周病の炎症が血糖のコントロールを乱し、糖尿病があると歯周病も進みやすくなります。歯周病の治療によって血糖の指標(HbA1c)が平均0.4%程度改善したとの報告もあります[5]。 |
|---|---|
| 心臓・血管の 病気 | 歯周病菌やその産物が血管に影響し、動脈硬化・心臓や血管の病気との関連が指摘されています。 |
| 誤嚥性肺炎 | お口の細菌が唾液や飲食物とともに誤って気管に入り、肺炎の一因になることがあります。特にご高齢の方で注意が必要です。 |
| 早産・ 低体重児 | 妊娠中の重い歯周病は、早産・低体重児との関連が指摘されています。妊娠期のお口のケアが大切です。 |
| 認知症 | 歯周病と認知症との関連を示す研究が報告されています。噛めること・お口の健康を保つことの大切さが注目されています。 |
※これらは「関連が指摘されている」ものであり、歯周病だけが原因という意味ではありません。ただ、お口を健康に保つことが全身の健康管理の一つになることは、多くの研究が示しています。
なぜ、お口の炎症が全身に影響するの?
進行した歯周病では、歯ぐきの中に炎症を起こした面(潰瘍面)が広がっています。ここから細菌やその産物、炎症を起こす物質が血液中に入り込み、全身をめぐります。これが、糖尿病や血管の病気など、さまざまな不調に関わると考えられています。つまり歯周病を抑えることは、全身への負担を減らすことにもつながります。
歯周病による「咬合崩壊」― 進行と歯の喪失を早め、全身にも
歯周病が進むと、歯を支える骨が失われて歯がぐらつき、やがて抜けていきます。奥歯などを失うと噛み合わせのバランスが崩れ、残った歯に過剰な力が集中する「咬合崩壊(こうごうほうかい)」が起こります。すると、次のような悪循環に陥ります。
- 負担が集中した歯の周りの骨がさらに壊れ、歯周病の進行が早まる
- 次々と歯を失い、歯の喪失が加速する
- うまく噛めなくなり、食べられるものが偏って、栄養状態や全身の健康にも影響する
咬合崩壊は「歯を失った結果」であると同時に、「さらに歯を失う原因」にもなります。だからこそ、残せる歯は歯周病治療で残し、失った部分は入れ歯やインプラントで噛み合わせを回復して負担を分散することが、残っている歯を長持ちさせ、全身の健康を守ることにつながります。
研究でわかってきたこと ― 歯周病菌と血管・重症化(専門的な内容)
※ここはやや専門的な内容です。読み飛ばしていただいてもかまいません。
歯周病の代表的な原因菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis/Pg菌)は、歯ぐきの血管から全身に入り込み、動脈硬化を起こした血管の壁(プラーク)の中から検出されることが報告されています[1]。さらに、生きたまま組織に入り込んだPg菌が動脈硬化巣から見つかったという報告もあり[2]、歯周病菌が血管の病気に直接関わっている可能性が示されています。
また、Pg菌には病原性(毒性)の異なる型(株)があり、特定の型(線毛の遺伝子型 fimA II型など)は、より重い歯周病と関連することが報告されています[3]。同じ「Pg菌」でも、型によって危険度が違うと考えられています。
もう一つの重要な菌アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(A. actinomycetemcomitans/Aa菌)は、一般的な歯周病では検出されることは多くありませんが、若い方などに急速に進む「侵襲性歯周病」では検出されやすいことが知られています。特に毒性の強い型(JP2クローン)を保菌する若年者では、歯周病の発症リスクが大きく高まると報告されています[4]。
こうした知見は、歯周病を「細菌による感染症」として正確に検査することの大切さを示しています。当院では、菌の状態をPCR法で検査し、その結果に基づいて抗菌剤を用いた治療(抗菌療法)も歯周病治療に取り入れています。
特に気をつけたい方
- 糖尿病がある、血糖値が気になる
- 心臓・血管の持病がある
- ご高齢で、むせやすい・飲み込みにくい
- 妊娠中、または妊娠を考えている
- 歯ぐきの腫れ・出血を繰り返している
当てはまる方は、全身の健康のためにも、歯周病の検査と定期的なメインテナンスをおすすめします。
「治す」だけでなく「保つ」 ― メインテナンスの大切さ
歯周病は、治療で改善しても、ケアを怠ると再発しやすい病気です。良い状態を長く保つには、ご家庭でのケアに加えて、歯科での定期的なメインテナンス(クリーニング・チェック)が欠かせません。お口の健康を保つことが、結果として全身の健康を守ることにつながります。
よくあるご質問
- Q. 歯周病を治すと糖尿病もよくなりますか?
- 歯周病の治療で血糖の指標が改善する場合があると報告されています。ただし歯周病治療は糖尿病そのものの治療に代わるものではなく、主治医の治療と併せて取り組むことが大切です。
- Q. 妊娠中でも歯周病の治療は受けられますか?
- 体調の安定した時期であれば、多くの処置が可能です。妊娠中はお口のトラブルが起こりやすいため、早めのご相談をおすすめします。
- Q. 自覚症状がなくても検査したほうがよいですか?
- 歯周病は初期に症状が出にくい病気です。全身の健康のためにも、症状がなくても定期的な検査・メインテナンスをおすすめします。
お口から、全身の健康を守りましょう
当院では、歯周病の検査・治療から、良い状態を保つメインテナンスまで対応しています。持病のある方は、全身の状態もふまえて計画を立てますので、服用中のお薬やご病気もお気軽にお知らせください。歯周病治療の詳しいご案内は下記をご覧ください。
全身の健康のためにも、まずは歯周病の検査から。
▶ WEB予約はこちら ▶ お電話:052-242-2213〒460-0008 名古屋市中区栄3-15-27 いちご栄ビル7F
地下鉄 栄駅16番出口より徒歩5分/矢場町駅より徒歩2〜3分
1階「ナイキ(NIKE)」が目印です
参考文献
- Haraszthy VI, Zambon JJ, Trevisan M, Zeid M, Genco RJ. Identification of periodontal pathogens in atheromatous plaques. J Periodontol. 2000;71(10):1554-1560. doi:10.1902/jop.2000.71.10.1554
― 歯周病菌が動脈硬化巣から検出されることを示した研究。米国歯周病学会(AAP)の機関誌。 - Kozarov EV, Dorn BR, Shelburne CE, Dunn WA Jr, Progulske-Fox A. Human atherosclerotic plaque contains viable invasive Actinobacillus actinomycetemcomitans and Porphyromonas gingivalis. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2005;25(3):e17-e18. doi:10.1161/01.ATV.0000155018.67835.1a
― 動脈硬化巣から”生きた”歯周病菌を検出。米国心臓協会(AHA)の動脈硬化・血栓分野の専門誌。 - Amano A, Nakagawa I, Okahashi N, Hamada N. Variations of Porphyromonas gingivalis fimbriae in relation to microbial pathogenesis. J Periodontal Res. 2004;39(2):136-142. doi:10.1111/j.1600-0765.2004.00719.x
― Pg菌の型(fimA II型)と歯周病の重症度の関連を解説。歯周病学の国際専門誌。 - Haubek D, Ennibi OK, Poulsen K, Vaeth M, Poulsen S, Kilian M. Risk of aggressive periodontitis in adolescent carriers of the JP2 clone of Aggregatibacter (Actinobacillus) actinomycetemcomitans in Morocco: a prospective longitudinal cohort study. Lancet. 2008;371(9608):237-242. doi:10.1016/S0140-6736(08)60135-X
― Aa菌JP2クローンの保菌者で歯周病リスクが大幅に上昇することを示した前向き研究。世界有数の総合医学誌『Lancet』掲載(インパクトファクター非常に高)。 - Preshaw PM, Alba AL, Herrera D, et al. Periodontitis and diabetes: a two-way relationship. Diabetologia. 2012;55(1):21-31. doi:10.1007/s00125-011-2342-y
― 歯周病と糖尿病の双方向の関係、治療でHbA1cが約0.4%改善することを示した総説。欧州糖尿病学会(EASD)の主要専門誌『Diabetologia』。
出典:PubMed(米国国立医学図書館)より各論文を確認。
監修:高山歯科室 院長 高山 光平
名古屋・栄の高山歯科室 院長。1994年から歯周組織再生治療に取り組み、歯周病・インプラント治療を長年専門的に手がけています。医院・院長の紹介はこちら
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。歯周病と全身疾患の関連は研究で指摘されているものであり、効果や因果関係を保証するものではありません。持病の治療は主治医の指示に従ってください。診断・治療の適応やリスクは、検査のうえ個別にご説明します。