インプラントオーバーデンチャー|総入れ歯が動いて噛めない方の選択肢
総入れ歯が動いて噛めない場合、インプラントを2〜4本だけ支えに使い、入れ歯を留める「インプラントオーバーデンチャー」という方法があります。取り外して洗える構造は残したまま、入れ歯の動きを抑えることを目的とした治療です。
1. インプラントオーバーデンチャーとは
インプラントオーバーデンチャーは、顎の骨にインプラントを2〜4本埋め、その上に取り外し式の入れ歯をかぶせて留める方法です。英語の over(上から)+ denture(義歯)がそのまま名前になっています。
従来の総入れ歯は、歯ぐきの粘膜と吸着だけで支えています。そのため顎の骨が痩せてくると、支える土手そのものが低くなり、入れ歯が動く・外れる・当たって痛いという状態になりやすくなります。インプラントオーバーデンチャーは、この「支え」をインプラントから取る点が違います。
従来の総入れ歯・固定式との違い
無歯顎(すべての歯を失った状態)の治療は、大きく3つに分かれます。
| 比較項目 | 総入れ歯(従来) | インプラント オーバーデンチャー | 固定式 (ボーンアンカードブリッジ) |
|---|---|---|---|
| 支え方 | 歯ぐきの粘膜と吸着 | インプラント+粘膜 | インプラントのみ |
| 取り外し | できる | できる | できない(歯科医院で外す) |
| インプラント本数の目安 | 0本 | 2〜4本 | 4〜6本以上 |
| 手術の規模 | なし | 比較的小さい | 比較的大きい |
| 骨が少ない場合 | 手術は不要だが安定しにくい | 本数が少なく、前方の骨を使えることがある | 骨造成が必要になることがある |
| 毎日の清掃 | 外して洗う | 外して洗える | 外せないため器具を使った清掃が必要 |
| 費用の傾向 | 保険診療の範囲がある | 自由診療 | 自由診療 |
固定式(オールオン4・6を含むボーンアンカードブリッジ)については、総入れ歯からインプラントへ|オールオン4・6で解説しています。
2. 入れ歯の留め方(アタッチメント)の種類
インプラントと入れ歯をつなぐ部品をアタッチメントと呼びます。どれを選ぶかで、必要なインプラントの本数や清掃のしやすさが変わります。
| 種類 | 構造 | 本数の目安 | 特徴 | 交換が必要な部品 |
|---|---|---|---|---|
| ロケーター (スタッド型) | インプラント1本ごとに突起を立て、入れ歯側の受けではめ込む | 2〜4本 | 部品が小さく、入れ歯を薄く作りやすい。着脱の力は受け部分の交換で調整できる | 入れ歯側の樹脂部品 |
| バー アタッチメント | インプラント同士を金属のバーでつなぎ、入れ歯側のクリップで留める | 4本前後 | 力が複数のインプラントに分散する。バーの下の清掃に手間がかかる | クリップ |
| 磁性 アタッチメント | インプラント側に金属、入れ歯側に磁石を入れて吸着させる | 2〜4本 | 着脱が軽く、手の力が弱い方でも扱いやすい。横方向の力には弱い | 磁石部分 |
3. 適しているケースと、慎重に検討するケース
適していることが多いケース
- 下顎の総入れ歯が動く方。下顎は上顎のように吸着する面積がなく、入れ歯が浮きやすいため、少ない本数でも改善を見込める場面が多くあります
- 総入れ歯を何度か作り直しても安定しない方
- 固定式を希望したが、骨の量が足りず本数を確保できないと言われた方
- 手術の規模をできるだけ小さくしたい方
- ご自身で外して清掃したい方、介助する方がいる場合
慎重に検討するケース
- 喫煙されている方。インプラント周囲の組織の治りに影響することが知られています
- 糖尿病の状態が安定していない方。内科と連携したうえで時期を判断します
- 骨粗鬆症の薬(ビスフォスフォネート製剤など)を使用中の方。処方元に照会し、休薬の要否を含めて検討します
- 歯ぎしり・食いしばりが強い方。部品の破損が起こりやすいため、対策を併せて設計します
- 定期的な通院が難しい方。アタッチメントの点検と交換が前提の治療になります
4. 固定式(オールオン4・6)を希望される場合
「入れ歯のように外すのは避けたい」という理由で、はじめから固定式を希望される方もいらっしゃいます。当院は固定式(ボーンアンカードブリッジ/オールオン4・6)にも対応していますので、ご希望があればそちらを前提に検討します。
どちらが適しているかは、顎の骨の状態と、治療後に続けていただく清掃によって変わります。固定式を選ぶ前に、次の点をご確認ください。
| 確認する点 | 固定式(オールオン4・6) | インプラント オーバーデンチャー |
|---|---|---|
| 必要な本数 | 4〜6本以上。足りなければ骨造成を併用する | 2〜4本。骨が残っている部位を選んで使える |
| 毎日の清掃 | ご自身では外せないため、人工歯の下に器具を通す手技が必要 | 外して洗える |
| 唇や頬の張り | 人工歯肉で補える量に限りがあり、痩せた部分を補いにくいことがある | 入れ歯の床(しょう)で補いやすい |
| 修理・交換 | 歯科医院で取り外して対応する | 部品の交換で対応しやすい |
| 費用の傾向 | 本数が多い分、高くなる傾向 | 本数が少ない分、抑えられる傾向 |
手指の細かい作業がしづらい方や、通院の間隔が空きやすい方では、外して洗えることが衛生面で有利に働く場面があります。一方、入れ歯という形そのものを避けたい、装着感を重視したいというご希望がはっきりしている方には、固定式が合うことがあります。どちらが優れているという関係ではありません。
当院では、CTで骨の高さ・幅・質を確認したうえで、両方の設計を並べてお示しします。骨の条件から固定式が難しいと判断する場合は、その理由もあわせてご説明します。固定式の詳細は総入れ歯からインプラントへ|オールオン4・6をご覧ください。
5. 名古屋で相談するときの一問一答
Q. オールオン4を希望していますが、オーバーデンチャーを勧められることはありますか。
あります。多くは骨の量と、毎日の清掃をどこまで続けられるかが理由です。固定式は4〜6本以上を支えとするため、骨が足りない場合は骨造成を併用するか、本数を抑えられるオーバーデンチャーにするかの判断になります。また固定式はご自身で外せないため、清掃の手技を続けられるかどうかも設計に影響します。ご希望を伺わずに決めることはありません。両方の設計を並べてお示しし、選んでいただきます。
Q. 「総入れ歯が合わない」と言われました。作り直しとインプラント、どちらを先に考えるべきですか。
まず現在の入れ歯が合わない理由を切り分けます。噛み合わせや床の形の問題であれば、作り直しで改善する場合があります。一方、顎の骨の土手そのものが低くなっていることが原因なら、作り直しても同じ経過をたどりやすく、支えを足す方法が検討対象になります。順番としては、原因の特定が先です。
Q. 下顎だけ行うことはできますか。
できます。実際に、上顎は従来の総入れ歯のまま、下顎だけインプラントオーバーデンチャーにするという設計は一般的です。上顎は口蓋(上あごの天井)で吸着を得られるのに対し、下顎はその面積がないため、困りごとが下顎に集中しやすいためです。
Q. 「骨が痩せている」と言われましたが、可能性はありますか。
本数を4〜6本以上必要とする固定式に比べ、オーバーデンチャーは2〜4本で設計できるため、骨が残っている部位を選んで使えることがあります。それでも足りない場合は骨造成を併用するかどうかを検討します。当院は骨造成を行っているため、他院で本数を確保できないと言われた方のご相談も受けています。
Q. 今使っている入れ歯をそのまま使えますか。
状態によります。床(しょう)の厚みや適合が保たれていれば、アタッチメントを組み込んで活用できる場合があります。摩耗や破損が進んでいる、噛み合わせが大きくずれているといった場合は、新しく作る前提で設計します。
Q. 手術が怖いのですが、眠っている間にできますか。
当院には麻酔を担当する歯科医師が在籍しており、静脈内鎮静法に対応しています。鎮静薬を点滴しながら手術を行う方法で、うとうとした状態で受けていただけます。全身の状態を確認したうえで適応を判断します。
6. 治療の流れと通院回数
| 段階 | 内容 | 通院の目安 |
|---|---|---|
| 1. 相談 | 困っている内容の確認、現在の入れ歯と口腔内の確認、治療方針の説明 | 1回 |
| 2. 精密検査 | CT撮影、口腔内スキャン、噛み合わせの診査、全身状態の確認 | 1回 |
| 3. 設計の決定 | インプラントの本数・部位・アタッチメントの種類、費用と期間の提示 | 1回 |
| 4. 手術 | インプラントの埋入。必要に応じて骨造成を併用。静脈内鎮静法の選択可 | 1〜2回 |
| 5. 治癒期間 | インプラントと骨が結合するのを待つ。期間中は現在の入れ歯を調整して使用 | 経過観察 |
| 6. 入れ歯の製作・装着 | 型取り、噛み合わせの記録、アタッチメントの組み込み、調整 | 4〜6回 |
| 7. メインテナンス | 清掃状態の確認、噛み合わせの調整、アタッチメント部品の点検と交換 | 定期的に継続 |
治癒期間を含めた全体の期間は、骨造成の有無や上下どちらを治療するかで変わります。具体的な回数と期間は、精密検査のあとに書面でお示しします。
7. リスク・副作用と、長く使うために必要なこと
インプラントオーバーデンチャーは自由診療(保険適用外)です。次のリスク・副作用があります。
- 手術に伴う腫れ、内出血、痛み
- インプラントと骨が結合せず、埋め直しが必要になることがある
- 下顎では下歯槽神経、上顎では上顎洞に近い部位があり、位置によっては知覚の異常や上顎洞への影響が起こりうる
- 清掃が不十分な場合や喫煙により、インプラント周囲炎を起こすことがある
- アタッチメント部品の摩耗・破損により、交換や修理が必要になる
- 入れ歯の人工歯がすり減る、床が破損することがある
- 顎の骨の変化により、年月の経過とともに入れ歯の適合が変わる
入れ歯が安定すると、噛めるようになった分だけインプラントと部品にかかる力も増えます。装着して終わりではなく、噛み合わせの調整と部品の点検を続けることが、長く使ううえで欠かせません。
よくあるご質問
Q. インプラントオーバーデンチャーは何年くらいもちますか。
インプラント本体と、上にかぶせる入れ歯・アタッチメント部品は分けて考える必要があります。入れ歯と部品は消耗品で、交換や修理を前提としています。インプラント本体がどれだけ機能し続けるかは、清掃状態、噛み合わせ、喫煙の有無、全身状態、そして点検を継続できるかによって大きく変わります。年数を保証できるものではありません。
Q. 固定式のオールオン4とオーバーデンチャー、どちらを選べばよいですか。
顎の骨の量、毎日の清掃をどこまで続けられるか、入れ歯という形を避けたいかどうかで変わります。固定式は4〜6本以上を使い、ご自身では外せない構造です。オーバーデンチャーは2〜4本で、外して洗える構造です。CTで骨を確認したうえで、両方の設計を並べてご説明します。当院はどちらにも対応しています。
Q. 総入れ歯と比べて、噛む力はどのくらい変わりますか。
支えがインプラントに移る分、入れ歯の動きが抑えられ、力を入れて噛みやすくなることが期待されます。ただし回復の程度には個人差があり、顎の骨の状態、本数、噛み合わせ、対合(かみ合う相手側)の状態によって変わります。具体的な数値をお約束できる治療ではありません。
Q. 毎日の手入れは総入れ歯と違いますか。
入れ歯を外して洗う点は同じですが、口の中に残るインプラントとアタッチメントの周囲を清掃する手順が加わります。歯ブラシに加えて、部位に応じた補助用具をお使いいただきます。使い方は装着時にお伝えします。
Q. 他院で入れたインプラントの上に、オーバーデンチャーを作れますか。
インプラントのメーカーと種類が特定でき、周囲の骨とインプラント自体の状態に問題がなければ、検討できる場合があります。当院は複数のメーカーのシステムに対応しているため、まずは現状の確認からご相談ください。
Q. 持病があって手術を断られたことがあります。
内科の主治医に現在の状態を照会したうえで、手術の可否と時期を判断します。当院には麻酔を担当する歯科医師が在籍しており、全身状態の管理が必要な場合の対応を行っています。結果として手術を見送る判断になることもありますが、その場合も現在の入れ歯の改善という選択肢をご説明します。
- インプラントオーバーデンチャーは、インプラント2〜4本で入れ歯を留める方法で、取り外して洗える構造は残ります
- 固定式(ボーンアンカードブリッジ・オールオン4/6)より本数が少なく、骨が残っている部位を選んで使える場合があります
- アタッチメントは消耗品を含むため、点検と部品交換を続けることが前提の治療です
- 困っているのは上顎ですか、下顎ですか。下顎に集中しているなら、下顎だけの治療で解決する場合があります
- 今の入れ歯は何年使っていますか。作り直した回数は何回ですか。作り直しても同じ経過なら、支えの問題である可能性があります
- 骨粗鬆症の薬、糖尿病の薬を使っていますか。お薬手帳をお持ちいただくと、初回から具体的な話ができます
当院での対応
- CT・口腔内スキャナーによる精密検査のうえで設計します
- 骨造成を行っているため、本数が確保できないと言われた場合もご相談いただけます
- 麻酔を担当する歯科医師が在籍し、静脈内鎮静法に対応しています
- 複数のインプラントメーカーのシステムに対応しています
- デンタルローン(スルガ銀行)をご利用いただけます
- 相談の内容
- お困りの内容の確認/現在の入れ歯と口腔内の確認/考えられる選択肢と、それぞれの進め方のご説明
- 所要時間
- 約30分
- 費用
- 一般的なご質問にお答えする範囲では、費用はかかりません。お口の中を拝見して個別にご説明する場合は、保険診療の検査・診断となります。
- お持ちいただくもの
- 健康保険証(マイナ保険証)/現在お使いの入れ歯/お薬手帳/他院で受けた検査資料(お持ちの場合)
※掲載している写真は構造を説明するためのイメージであり、当院の症例写真ではありません。